■特集について
今回は「山手樹一郎の風景」と銘打ちまして当クラブ第二代会長 山手樹一郎の巻頭特集三本立てです。
(特集①) 昨年2月5日に、さいたま文学館主催で開催されました「『桃太郎侍』生みの親 山手樹一郎の世界」の企画・展示・運営に尽力されました影山亮氏による文芸評論です。
長年に亘り山手樹一郎を研究されて博士号を取得された影山氏だからこそ成せる学術的な論考でもあり、山手の生誕から作家デビュー、ペンネームの由来から売れっ子作家に至るまでの軌跡を第一級の貴重な文献の解析をベースに、関係者への聞き取り(オーラルヒストリー)の成果が発揮されリアリティを増しています。巻頭を飾るに相応しい渾身の文芸評論を味わえます。
(特集②) 山手の代表作『桃太郎侍』を演じてこられた俳優の高橋英樹氏による文芸評論です。
高橋英樹氏はご自身の著書『高橋英樹のおもしろ日本史』にて第二回野村胡堂文学賞特別賞受賞、そして昨年は映画やテレビドラマでの名演技が国民に夢や希望、勇気を与えたご功績が認められまして第6回あらえびす文化賞を受賞されております。
山手の原作によるテレビドラマ「桃太郎侍」で実際に主役を演じられた高橋英樹氏の役者魂の神髄が吐露されています。そこには明朗時代小説家として一世を風靡した山手樹一郎の世界を高橋氏が実演家として如何に表現されようとしたのかの軌跡を縦横に語り尽くされていました。
(特集③) 山手樹一郎にとっての出世作にして代表作である『桃太郎侍』の初回から四話までを皆様にお届け致します。
岡山の『合同新聞』(現在の山陽新聞)に連載されました本作は山手にとって初の新聞連載作品であり、戦時下において「明朗時代小説」として大衆から爆発的支持を受けた所以を是非とも体感してください。
■本誌の特徴について
特集に続いて野村胡堂文学賞を受賞されました塚本靑史氏、熊谷敬太郎氏の歴史・時代小説をはじめ、小説が8本を占め本誌の背骨を構成しています。巻末には滝洸一郎氏の純文学作品が異彩を放ち、殺陣師の滝氏だけに切れば血が出るような鋭利な作品に仕上がっています。
小説以外にもノンフィクションと随筆が各2本盛り込まれ、これらの3ジャンルは一般の文芸誌と同様に全て2段組みの見開きから始まります。評論の4本は巻頭見開きを除き全て3段組みの奇数ページ起しとして誌面に変化をつけました。さらに詩歌や写真、絵画、コラム等を配し、雑誌としての彩やアクセントを施しています。こうした多種多様なコンテンツをご提供できるのも、当クラブ会員の多様性の証左であり、人材の宝庫であることを示していると思います。
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刊行に際しましては、原稿をご執筆くださいました会員の皆さまをはじめ、多くの方々のご協力を賜りましたことを、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
なお、せっかくご執筆いただきながら誌面の関係で収まりきれず、次号までお待ちいただくことになりました会員の皆さまには心よりお詫び致します。
(編集人)
【書誌データ】
◆編 集 人
藤橋 和浩
櫻井 健多
◆発 行 人
竹内 博
◆発 行 日
2023年3月30日
◆頒 価
1,200円
お手にとってくださった方々におかれましては篤く御礼申し上げます。
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