第7回「野村胡堂文学賞」授賞作品は
木下昌輝 著『絵金、闇を塗る』に決定しました!

一般社団法人日本作家クラブが主催しています第7回「野村胡堂文学賞」の授賞作品は、作家の木下昌輝(きのした・まさき)氏の時代小説『絵金、闇を塗る』(集英社刊)に決定しました。
この小説の主人公は、幕末の土佐藩に生まれた天才絵師・絵金。その狂気に満ちた謎の多い生涯を、絵金の絵によって時代の渦に巻き込まれていった武市半平太や坂本龍馬、岡田以蔵らの眼を通して描かれた6つの短編小説からなる群像劇です。
血で血を洗うような幕末・維新の激動期に、「血赤」といわれるような特異な筆づかいで観る者を戦慄させた天才絵師・絵金とは何者だったのでしょうか。
気鋭の歴史小説家・木下氏らしい実証的な歴史観に基づいたストーリー展開は斬新で冴えわたり、絵金の実像に迫っていきます。まさに本賞の授賞にふさわしい時代小説に仕上がっています。
木下氏は直木賞候補に3度もノミネートされるほどの実力派で、本賞にもこれまで2度候補になりましたが、今回3度目での受賞となりました。

■『絵金、闇を塗る』(集英社刊)あらすじ(担当編集者まとめ)

髪結の息子として幕末に土佐に生まれ、幼いころから絵の才能を発揮した絵金は、その才を見込まれ、豪商・仁尾順蔵の援助を得て江戸にのぼり、狩野派に入門する。絵金は破天荒な振る舞いをしつつも、先輩絵師の前村洞和を震撼させるほどの才能を発揮し、通常の三分の一ほどの修業期間で免許皆伝を得た。狩野探幽以来の天才と呼ばれた狩野洞春の諱(美信)から一字拝領し、「美高」を賜るほどの腕前であった。絵金は故郷に戻り、土佐藩家老・桐間清卓のお抱え絵師となり、将来は万全と思われた。だが、絵金の絵は、それを観る者の心を妖しく揺さぶり、関わる者たちの生き方を、思いがけぬ方向へといざなっていく。歌舞伎役者・市川團十郎、志士・武市半平太、絵師・河田小龍ほか、その絵に人生を動かされた六人の男たちの運命から、絵金の恐るべき芸術の魔力と底知れぬ人物像が浮かびあがる、傑作時代小説。

■『絵金、闇を塗る』(集英社刊)目次


一章 岩戸踊り
二章 絵金と画鬼
三章 人斬りの目覚め
四章 末期の舞台
五章 獄中絵
六章 絵金と小龍

■木下昌輝(きのした・まさき)氏のプロフィール

1974年奈良県生まれ、近畿大学理工学部建築学科卒。2012年「宇喜多の捨て嫁」でオール読物新人賞を受賞。2015年、単行本『宇喜多の捨て嫁』(文藝春秋)で直木賞候補。同作で歴史時代作家クラブ賞、舟橋聖一文学賞、高校生直木賞を受賞。2017年、『敵の名は、宮本武蔵』(KADOKAWA)で直木賞候補、2018年、『宇喜多の楽土』(文藝春秋)で直木賞候補。その他に『秀吉の活』(幻冬舎)、『兵』(講談社)などがある。

■「野村胡堂文学賞」とは

「野村胡堂文学賞」は、大正・昭和を代表する国民的大作家である 野村胡堂を顕彰する目的で、「一般社団法人 日本作家クラブ」が創立60周年記念事業の一環として創設し、2014年(平成26)1月に授賞式を行った全く新しい文学・文芸賞です。第2回授賞式以降は 胡堂の生誕月である10月に、記念碑のある神田明神で開催されてきました。
新聞記者、編集者、音楽評論家などの多様な顔も持つ大先達、野村胡堂のなした膨大な仕事と、その生涯の中で、特に江戸の下町を舞台に“目明かし”が活躍する国民文学、捕物小説の一大傑作である『銭形平次』を著し、戦前・戦後を通じて庶民、大衆を勇気づけてきました。現在、時代小説や歴史小説は大衆文学の中で人気ジャンルの一つとして定着し、多くの作家が胡堂の精神を継承しています。
野村胡堂の作品に匹敵するような時代・歴史小説を出版し、「野村胡堂文学賞」にふさわしい作品を1点選出し、授賞作家には賞金と記念品を授与しています。
なお、本年度は日本作家クラブの創立70周年にあたるため、授賞式の前に記念イベントを開催し、式典会場も如水会館に変更して11月12日に行います。