第13代日本作家クラブ理事長 郷原 宏
このたび日本作家クラブの理事長に就任した郷原宏です。私は若いころから野村胡堂の「銭形平次」が大好きで、河出書房版『銭形平次全集』全383篇を繰り返し愛読し、映画やテレビドラマになった作品も欠かさず観てきました。そして2019年に、岩手県の旧制盛岡中学で同窓だった野村胡堂と石川啄木の友情を主題にした評伝『胡堂と啄木』を上梓しました。また2024年に出版した『ことば探偵金田一京助の秘密』では、同じく盛岡中学で机を並べた国語学者金田一京助と胡堂の交友を描きました。
そういう事情もあって、2021年に「野村胡堂文学賞」の選考委員長を委嘱され、これまでに砂原浩太郎、蝉谷めぐ美、天野純希、武内涼、赤神諒氏らの俊英が世に羽ばたくお手伝いをさせていただきました。みなさんもよくご存知のように、これらの受賞者はいま、日本のエンタテインメント文学を代表する人気作家として活躍されています。
日本作家クラブは、この「野村胡堂文学賞」のほかに、胡堂のもうひとつの顔である音楽評論家としての筆名に由来する「あらえびす文化賞」を創設し、音楽、演劇、芸能などの分野で活躍する多彩な文化人を顕彰してきました。「文」と「芸」にまたがる日本文化の総体的な向上発展を図る上で、このふたつの顕彰事業の社会的重要性はますます高まるものと考えています。
今回はからずも、高齢を理由に退任された竹内博氏の後を受けて、不肖私が第13代理事長を拝命することになりました。これはもとより身に余る大任ではありますが、お引き受けした以上は、本会の創設者である野村胡堂の名に恥じぬよう、日本文化の向上と会員相互の親睦のために微力を尽くすつもりです。どうぞよろしくお願いします。
◆郷原 宏(ごうはら ひろし)
1942年、島根県出雲市生まれ。早稲田大学政経学部卒。読売新聞記者をへて文筆専業。74年詩集『カナンまで』でH氏賞、83年評論『詩人の妻―高村智恵子ノート』でサントリー学芸賞、2006年『松本清張事典決定版』で日本推理作家協会賞(評論部門)を受賞。その他の著書に新日本現代詩文庫『郷原宏詩集』『清張とその時代』『日本推理小説論争史』『乱歩と清張』『立原道造―抒情の逆説』『岸辺のない海―石原吉郎ノート』など。日本現代詩人会(第35代)会長。趣味は囲碁。
