「あらえびす文化賞」とは
About ARAEBISU Cultural Prize

 本賞は、大正・昭和を代表する国民的大作家である 野村胡堂を顕彰する目的で、「一般社団法人 日本作家クラブ」が創立60周年記念事業の一環として創設し、先ず2013年に「野村胡堂文学賞」、2016年に「あらえびす文化賞」の授賞式を行ないました。野村胡堂は、その生涯の中で、特に江戸の下町を舞台に“目明かし”が活躍する国民文学、捕物小説の一大傑作である『銭形平次捕物控』を著し、戦前・戦後を通じて庶民、大衆を勇気づけてきました。もう一つの顔がペンネーム「あらえびす」として一世を風靡した格調高い音楽評論家。本賞は、こうした胡堂の多様にわたる業績をカバーするために文学賞を除いた文化全般を対象にしています。

日 時
Date and time

  • 令和6年6月10日(月)
    午後4時

会 場
Location

  • 神田明神
    住所:東京都千代田区外神田2丁目16-2

第八回 あらえびす文化賞 受賞者
8th Araebisu Cultural Prize winners

女優 水谷八重子
俳優、ジャズ歌手、エッセイストとして日本の芸術・大衆文化の発展に大きく貢献。また、野村胡堂原作の映画「銭形平次捕物控 美人蜘蛛」(1960年)への出演など胡堂作品との縁も深い。

■受 賞 の 言 葉


 えっ? 何故? この私が? 「あらえびす文化賞」を?
 あらえびすっていったいなに?
 あの、「銭形平次」を書いた野村胡堂先生のもう一つのお名前。まさか平次親分のご縁で?
 と、言いつつ思い出すのは大川橋蔵親分の公演。

「今度出るのよ、歌舞伎座の銭形親分に」
 母に報告をした。
「どうせ最後に捕まる役よ」
「残念でした。女房、お静の役なんです」

「ねえ、障子の貼り方、教えてよ」
 芝居が落ち着くと、親分にご飯を誘われた。近しい子分たちの中に、加えて下さった。
 小さい鯛の焼き物が出て、骨になった途端に下げられた。大振りの茶碗に、みんなの骨が集められて、お酒の炎をあげている。鯛の骨酒だ。それを平次一家で回し飲みをする。
 初出演の私を加えて下さったなんて、なんたる光栄。
 優しい方だった。素敵な方だった。「あらえびす文化賞」を頂きましたって、報告したい。それも考えてみれば、長谷川一夫先生のおかげかも知れない。

 胸布団、胴布団、腰布団、着物を着る時用の詰め物を、全部持たされて、京都大映撮影所の長谷川先生の元へ送り込まれた。ありとあらゆる、詰め物を詰めて、衣装を着せられて、長谷川先生の所に行った。
「よう肥えてるなあ」
 第一声がこれだった。

「そこいらじゅうに詰め物をして、女の曲線をなくして、なんで女型の真似するんや! 自然に、女型が出せない曲線が出るやないか!」
 ズーーーっと先生のお言葉を守っております。

 この歳になりますと、曲線を守る術もなく、「歌う」という表現がありがたい。妙齢の女にも、子供にも、やさぐれた男にもなれます。
 この「あらえびす文化賞」、最高に嬉しい贈り物でございます。

第八回 あらえびす文化賞受賞
水谷八重子

■水谷八重子(みずたに やえこ)氏のプロフィール

 50年代、ジャズ歌手として人気を博した「水谷良重」は、1955年、16歳で新派の舞台にデビュー。映画「妖刀物語 花の吉原百人斬り」の、片岡千恵蔵を相手にした名演は、映画史に残る。「若い季節」や「あなたとよしえ」などNHKのドラマや、日本テレビの音楽バラエティでも活躍。1995年、二代目水谷八重子を襲名、「滝の白糸」「日本橋」「佃の渡し」「婦系図」など、新派の代表作を主演女優として支える。

■選評

 水谷八重子さんの芸歴には誠に輝かしいものがあります。昭和30年代放送の超人気ドラマ「若い季節」では中心的な役柄を演じていました。NHKアーカイブスを検索すると、今でも出演者の筆頭には水谷八重子(2代目)との表記があり、共演者のお名前にも驚かされます。黒柳徹子、森光子、淡路恵子…三木のり平、渥美清、ハナ肇とクレージーキャッツ、坂本九、ジェリー藤尾…。
ザ・ピーナッツが主題歌を歌い、「プランタン化粧品」という銀座にある架空の化粧品会社を舞台にしたドラマの時代から、水谷八重子さん(当時は水谷良重さん)は当時日の出の勢いだった日本のテレビ放送において中心的な役割を担って来られ現在に至っています。
更に俳優としての活躍も目覚ましく、数多く出演された映画の中には、当クラブの原点とも言える野村胡堂原作『銭形平次捕物控』の中の「美人蜘蛛」にも出演されています。
女優として数々の名場面に出演し、舞台での代表作は「佃の渡し」、「滝の白糸」等多数で、新派を率い新橋演舞場新派公演「女優」での松井須磨子役をはじめ、多くの当たり役を演じています。新派の代表的俳優として高い評価を受け続け、朗読「義血侠血」も高い評価を受けています。
また、ジャズ歌手(水谷良重)としても人気を博し、「NHK紅白歌合戦」には、第9回から第12回まで4回連続出場されました。第46回「NHK紅白歌合戦」での審査員としての出演を含め、歌手としても審査員としても「紅白」に出演した稀有な存在でもあるのです。
テレビ草創期の昭和時代から平成、そして令和へと時代を越えて活動し、最近でも音楽コンサートに出演するなど活躍が続いています。これら芸術文化における多くの功績に対し「第8回あらえびす文化賞」にふさわしいため今回のご受賞となりました。

あらえびす文化賞 選考委員長
日本作家クラブ理事長 竹内 博

 

授 賞 式

「あらえびす文化賞」受賞の水谷八重子氏(中央)。左は神田明神権宮司の木村雄一氏、右は竹内博理事長(於:神田明神会館)
神田明神で行われた昇殿参拝にて。拝殿にて玉串を捧げる水谷八重子氏。右隣は竹内博理事長
神田明神境内にある「銭形平次の碑」の前にて。水谷八重子氏(中央右)、竹内博理事長(同左)を囲んで

「あらえびす文化賞」協賛法人・団体
OFFICIAL SPONSORS

江戸総鎮守 神田明神